中学2年の時だったと思う。当時「月の家円鏡(現在:橘家 圓蔵)」がパーソナリティをしていたラジオ番組が夕方にあり、たまに聞いていた。そこから流れてきた曲は『心もよう』だった。「なんと、きれいな声なのだろう!」いっぺんに虜になった。そのころ、ギターがはやり始めていて、親戚の叔母からガットギターをもらったのだった。そう言えば、当時「明星」とか「平凡」なんて音楽雑誌もあったよね。前にも書いた気がするが、そのすばらしい声の持ち主をとてもハンサム(例えば草刈正雄のような...)と勝手に想像していた。 その当時好きだったのはバレー部のK子さん。その子がたまたま誰かに貸したレコードが戻ってきていた。そのアルバムの名前は、『もどり道』。当然、「貸してぇ〜!」である。さて、陽水が聞きたかったのか、彼女と接点を増やしたかったのか... まだまだ純情な頃である。しかし、爆発しているような髪の毛の陽水に少なからずガッカリしたのであった。 しかし、借りたレコードには参ってしまった。それからギターを練習し始めた。それも、『もどり道』の楽譜を買ってきて、ただただそれを繰り返すのである。日々、同じ歌を歌った。今でも、きっと全曲楽譜なしで歌えるのではあるまいか。 尾崎紀代彦はレコードを買ったという原点だが、僕の歌の原点は陽水だろう。この『もどり道』はその後レコードを買って、今はCDを聞いている。A面は『夏まつり』と言うしっとりとしたギター1本の歌で始まり、アコースティックでまとめられている。「いつの間にか少女は」とか、「人生が二度あれば」とか。「あかずの踏切り」もモップスのとはバージョンが違う(モップスとは、鈴木ヒロミツ・星勝などがメンバーのバンド)。それに対してB面は『感謝知らずの女』で始まり、エレキギターでガンガンと言う感じだ。「東へ西へ」とか、「夢の中へ」とか。そしてこのアルバムには、手書きの陽水の年表と歌詞カードが入っていて、親切なことにその歌詞カードにはギターのコードが記述されている。その陽水の文字は独特のクセがある。 今はすっかり変なオジさんになってしまったが、それでも歌声を聞くと心がふるえる。しかし、年をとったのは陽水ばかりではなく、自分もすっかり変なオジさんである。 |