旅行記[2002/05/25・Vol.05 金沢望郷歌]




室生犀星をご存じだろうか...

  《帰去来》は高校の授業で知った。犀星と言うと《小景異情》が有名だが、「ふるさとは遠きにありて」と聞けば、たいていの人はわかるだろう。しかし、《帰去来》と言うと「さだまさし」のLPを思い出す人もいるかも知れないね。

  《帰去来》
  掃かんとすれど庭なく
  植ゑんに木を見るすべもなし
  母も父も死に絶え
  えにしある人もまた絶ゆ
  故山いたづらに剣のごとく立ち
  残雪また夕日に燃ゆ
  帰り来つて我は去らなん

  《人》
  帰り来つてまた我の去りなん
  哀しい人を見ず   (かなしいひと)
  愛しい人もあらず  (かなしいひと)
  人はやがては果つらん
  あの人もこの人も果つらん

 他にも、「昨日いらっしゃってください」など、ジィ〜ンとくる詩がいっぱいある。犀星は、明治22年金沢市で生まれ、石川近代文学館には犀星の展示室があり、肉声も聞けるのである。
 さて、金沢望郷歌は五木寛之の小説であるが、これがなかなかおもしろい。「夏の挽歌」「冬の春歌」「春の校歌」「秋の憂歌」の4部構成で、五木寛之が「作家になっていなければ、こんな人生もいいかも知れない」とあとがきにかいてある。タウン誌は『海市』と言い、その編集長が主人公だ。
 金沢は魅力的な町で、大河ドラマ「前田利家」で有名になった。一度訪れてみるといい。もっとも、数日ではとてもわかる町でない。私は2泊3日で行ったが、ぜんぜん足りない。1月だったが、夏・秋・春にものんびり行ってみたい。何故か郷愁を誘われる町なのである。



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