先日、都内での打ち合わせ前に時間が少し空いた。東京都庭園美術館をを思いだす。「さて、どうやって行けばいいのだろう?」とホームページを覗くと、営団地下鉄南北線の白金台下車・徒歩5分となっている。さっそく、乗換案内で調べてみると、マイ・マシンの乗換案内には白金台なる駅がない。バージョンを見ると、2000年6月版である。これでは使えない。バージョンアップを考えないと... さて、東京都庭園美術館に話を戻すと、場所はJR山手線の目黒駅から歩いて7〜8分のところである。この建物は朝香宮邸として昭和8年(1933年)に完成し、主要内装デザインはフランス人デザイナーのアンリ・ラパンが中心となっている。目黒道路沿いに入り口があり、入場券を買って入る。すると、すぐ鬱蒼と木の茂る美術館へ向かう砂利敷きの道となる。あっと言う間に、都会の喧噪を忘れる。すると、まず石のオブジェが現れ、その先に旧朝香宮邸が見えてくるのだ。落ち着いたこじんまりとした印象を受ける。外観は丸い出窓が洒落ているが、それほど華美ではない。玄関へ近づくと何故か狛犬がいた。さて、問題の内扉だ。これはラリックの作である。当初、ラリックは裸体の女神をデザインしていたが、宮内省の要請によりロングドレスに変更された。確かに宮様の玄関に裸体はふさわしくないだろう。現在は、このラリックの扉を正面に見て、右側から入館する。ここは、建物そのものが芸術なのだ。 この日は、マジョリカ展を開催していた。しかし、それらの陶器は、僕の目にはほとんど入らない。壁を、天井を、窓を、ドアを、暖房のラジエーターグリルを、照明を、そんなものばかりに目がいってしまう。こんなところに暮らしたいとまでは思わないが、こんなホテルがあったら多少高くても是非泊まってみたいものだ。窓からの眺めも、とても都会とは思えない。ゆったりした気持ちになってくる。書斎も、書庫も、寝室も、バスルームも、階段の踊り場も、どこも気持ちが安らぐとともに、とても近親感がわいてくる。きっと、この建物で朝香宮さまご一家は、仲睦まじく暮らしていたのだろうと思いをめぐらせた。しかし、実際には、建築が完成した年の11月に妃殿下はご逝去されている。ほんの数ヶ月の幸せだったのだろう。そんな哀しい話を聞くと、ますますこの建物に気持ちが引き寄せられてくる。そして、これこそ閑静なのだと誰もが思うことだろう。 |