週間美術館[2004/05/30・Vol.09 Modigliani]



移ろうような瞳は何を...

  イタリア北部のトスカーナ地方リヴォルノの由緒あるユダヤ系の家系に生まれたモディリアーニ。22歳の時[1906年]にパリに渡り、彫刻家志望であったと言う。アフリカ民族に伝わる彫刻の研究と制作に没頭するが、飲酒と麻薬の耽溺による体の衰弱と材料費不足のため断念。絵画に専念したのは30歳の頃であった。
 33歳の時、画学生であったジャンヌ・エビュテルヌと結婚。しかし翌年、持病であった結核が悪化し、36歳の若さ[1920年]にしてその生涯を閉じる。翌日の未明、2人目の子を宿していたジャンヌもアパートの6階から身を投じ後を追った。ジャンヌの墓標には「すべてを捧げたアメディオ・モディリアーニの献身的な伴侶」の文字が刻まれていると言う。
 モジリアニの作品には、ゆったりとした優雅さがある。極端ななで肩、長い首、楕円形の輪郭。そして描かれていない瞳は、モデルの性格や心までも映し出しているようだ。独特にデフォルメがなされた肖像画が語るのは、一人の画家が芸術に注いだ溢れるほどの愛と情熱ではあるまいか。