サルバドールと聞いてピンと来る人は、かなりの美術通ではあるまいか。スペインはカタルーニャ地方の小都市、フィゲーラス出身の画家である。独特の口髭と奇矯な言動と言った方がわかりやすいだろうか。いや、柔らかい時計とか、引き出し・つっかい棒と言った方が、「あれね!」と思いあたるかも知れない。この画家とゴッホとの共通点が一つある。それは、二人が生まれる1年くらい前に兄が亡くなっていること。そして、その兄と同じ名前を両親が付けたことだ。それは、ある意味、全く別の方向で、二人に影響を与えたに違いない。 また、シャガールがベラを愛していたのは有名だが、サルバドールにはガラである。ある日、サルバドールがガラのために何ができるかと訊ねると、ガラは「私を殺して」と言ったそうだ。サルバドールはトレドの大聖堂からガラを突き落とそうと考えたと言う。ガラは、この時、詩人ポール・エリュアールの妻だった。そして、シャガールの絵にベラが良く描かれているのと同様に、サルバドールの絵にもガラが良く登場する。聖母になったり、女神になったり大活躍だ。 さて、サルバドールは画家であると同時に彫刻家だ。たいていの画家は、版画家でもあり、陶芸家でもあったりする。そんな中で、ブロンズ像というと、なかなかわかりにくいものが多い。もしくは、写実的な女性の裸体などとなるのが一般的だ。しかし、サルバドールは違う。簡単に言えば、おもしろいのだ。誰が見ても、おもしろいと思うだろう。「どうして、こう考えるかなぁ」という言葉が、笑いと共にこみ上げてくる。スターウォーズにでも出てきそうな3関節のゾウなどがあったり、ミレーのパロディがあったり。やたらと、つっかい棒が出てきたり。とても気軽に楽しめるのだ。芸術とは難しいものではなく、とても身近なものだと教えてくれているようだ。こんなユニークな画家を、たまに見るのもいいだろう。きっと心を和ませてくれるに違いない。都会の喧噪を忘れて、ふらっと磐梯山の麓へ行ってみてはいかがだろうか。そうそう、この画家の名前は、《サルバドール・フェリーペ・イ・ハシント・ダリ》。ダリと言えば、誰もが知っているはずだ。 |