気ままな雑文[2004/05/30・Vol.01 ペット]



お気に入りが少しずつ減っていく...

 ペットと言えば、たいていの方は犬や猫を思い起こすだろう。または小鳥や、変わったところでは爬虫類だろうか。しかし、僕にとっての『ペット』とはスナックであった。
 僕がその店に初めて入ったのは、もうかれこれ15年ほど前になるだろう。当時の同僚3人で1軒目は小料理屋のようなところへ行き、2軒目に寄ったのが『ペット』であった。2軒扉を並べていたうち、何となくもう1件は胡散臭いような気がして右側の店に入った。小さな店だった。カウンターに10席ほどあり、その後ろのテーブルは荷物置き場のようでほとんど座れない。入り口のすぐ右側に5〜6人座れるテーブルがあった。しかしそのテーブルに3人の先客がいた。女性二人と男性一人で、男性客はかなり酔っぱらっている。一方こちらの3人は男ばかりで、やはりその中の一人はかなり酔っぱらっている。それが初めてのペットであった。
 その女性たちと仲良くなったこともあったが、『ペット』には良く通った。その当時勤めていた会社から歩いて3分の所にあったことも理由の一つだろう。でも一番の理由は、そのお店の人たちと、通ってくるお客さんたちだった。一人で行っても、誰か来れば話し相手には事欠かない。しばらくお客さんが来なければ、マスターが上手に相手をしてくれる。ボトルが入っていればとても安い店だった。おつまみを何も頼まず、カラオケも歌わなければ、\1,000か\1,500であった。と言いつつ、他にお客さんが来なければめいっぱい歌っていたが。
 しかし、その店は道路拡張のため立ち退きになり、一駅離れてしまった。僕も仕事を変わり、行くことが滅多になくなってしまった。そんな風にご無沙汰をしていたのは僕だけではなくて、かなりのお客さんがそうだったようだ。そして、昨年の末お店は閉店した。「他の場所で、必ずまたやるからね」とママは言っていたがもう5ヶ月を過ぎてしまった。
 『ペット』の事は、1,000文字や2,000文字では語り尽くせない。でも、今はなくなってしまった。お気に入りのものがどんどん増えていく年代、そして徐々に減っていく年代。今は新しいお気に入りが増えるより、今までのお気に入りが減っていく。決して後ろ向きになるつもりではないが、そんな懐かしいお店のことを書いてみるもの良いかもしれない。