彼と彼女の Pale Ale [2006/07/02・Vol.05 ドライブ]



ワインディングロードをゆっくりと...

 浜辺のテラスでゆっくり過ごし、すっかりアルコールの抜けた僕は、彼女を、内心自慢のスポーツ・セダンのセカンド・シートへ。
国産自動車メーカーNが造ったこのセダンは、リアに『S』の文字が三つ並んでいる。
FMチューナーさえない車だが、1595ccのツイン・キャブのエンジンは快調だ。
バックシートのカセットラジオからは、自分で選んだ好きな曲ばかり。しかし、彼女には古すぎるのかも知れない。

 左手に海を眺めてしばらく走ると、漁港とお城の町に入る。
このお城には、小さな遊園地と動物園がある。
大人が楽しめるものではないが、幼い子供達にはいいだろう。
ふと、彼女を横目で見る。
すましているときはもちろん大人の女だが、笑ったときなどあどけない。
そんな彼女の、子供の時などを想像してみる。
思わずにやけている自分がおかしくなる。

 町を過ぎてしばらく国道を走ると、旧街道の曲がりくねった道だ。一人なら、かなりポジティブに運転するだろう。
コーナーは、ドリフトで抜けるより、ギリギリまでホールドするのが好きだった。
でも、今日はゆっくりと、まるでワルツでも踊るように、そしてしなやかに。
スーパー・スポーツと名が付いていても、この車はセダンである。
僕もそろそろ、こんな運転が似合う歳になったのかも知れない。
このまま、高原の小さなホテルを目指す。
もちろん、部屋をリザーブしてあるわけでない。
そのホテルには、小さな美術館がある。
小さいけれど、印象派前後の作品をいくつかまとめて見ることが出来る。
美術クラブに入っていた彼女に、よろこんでもらえると思って...