ゆっくり飲むはずだったビールは、きみが飲み干した。 もう一本頼もうかと思ったが、その前にきみと二人で砂浜を歩きたくなった。 そっと手をのばすと、サンダルを脱いだきみは、すり抜けるように浜辺に降りた。 僕は、肩すかしを食らったような右手を引っ込め、きみを追いかける。ばつの悪い苦笑いも、引っ込めて。 まだ、泳ぐには早いだろう。 僕も靴を脱いで、きみを波打ち際に追いつめる。 波が寄せる。はしゃいで、素足のきみは波から逃げる。 僕からも、逃げる。つまえて、抱きしめて、そう思うけど、きみはつかまらない。 夢の中のように、くるくる回ってきみは逃げる。 追いかけることに疲れた僕はテラスに戻り、ビールを注文する。 ひとしきり波と戯れたきみは、また僕のグラスでビールを飲み干す。まるで、僕をからかうように、ためすように。 僕もひるんではいられない。 きみの手首を軽く握って、引き寄せる。 そのまま抱きしめて、キスをしようか。 |