なぜ、わかれてしまったのだろう。いつ、わかれてしまったのだろう。ぼくが振り向いているうちに、きみは大人になってしまったのだろうか。 きっと、あれからいくつもの恋をして、さよならを繰り返すたびにきみはキレイになってゆくのだろう。 あの夏を思い出したかったから? そんなつもりでもなく握ったハンドル。次のカーブを曲がると海が見える。 あの夏の日の大きなヨットは、今でもそこにあるだろうか。やがて、水平線からの朝の光に、照らし出されるだろうか。 やっぱり、きみからサヨナラを言ったんだね。きみは、いつも前を見ていたよ。でも、ぼくだって振り返っていたばかりじゃない。 きみからは、立ち止まって見えたかも知れないけど、動き始めたところだった。でも、きみはぼくから離れていった。 海岸沿いに車を止めて、ウィンドー越しの波。きみがいなくなってからのぼくは、仕事の毎日を過ごした。 お酒を飲むことも少なくなって、車を運転することもなくなっていった。 海を見たのは、どれくらいぶりだろう。すっかりいろいろなことを忘れていたことを思い出す。きみを忘れていたことも思い出す。16年前にもらった財布は今でも使っているのに。 きみは、いまでもときめいているだろうか、自分の生活に。 ぼくは日々の生活に、とまどうことも忘れてしまった。 やっぱり、サヨナラを言えたきみの方が大人だったんだね。 ときめきと とまどいを その胸にしのばせて... |
■ガラス越しに消えた夏 --大沢誉志幸・松本一起-- やがて夜が明ける 今は冷めた色 次のカーブ切れば あの日消えた夏 君は先を急ぎ 僕はふり向き過ぎていた 知らずに別の道 いつからか離れていった サヨナラを繰り返し 君は大人になる ときめきと とまどいを その胸にしのばせて ツライ夜を数え 瞳くもらせた ガラス越しの波も 今はあたたかい 君がいないだけ 今は苦しくはない 二度とは帰れない あの日が呼びもどすけれど サヨナラを言えただけ 君は大人だったね ときめきと とまどいを その胸にしのばせて |