青森の戸来村(へらいむら)と言うところに、キリストの墓があるそうな。キリストは21歳の時日本に渡り、12年間神学を学んだ後、ユダヤに帰って神の教えについて伝道したという。そんな案内板があるのをご存じだろうか。まぁ、知らなくてもいいや。とにかくそんなところから話は始まるのである。 そこで自殺を目にしたのは、万梨子というオカルト雑誌のフリー記者。付き添ったのはカメラマンの律子。他に登場人物は、美少年の観音寺崇史(たかふみ)と眠り男の剣(はばき)杏之介。そして話は、京都の御霊神社へと進む。さて、万梨子・律子・眠り男の3人が訪れたのは京都の上御霊神社と下御霊神社。奈良時代から平安時代にかけて、政治的に失脚して死んだ貴族が、恨みを残して祟ると信じられていた時代がある。少し前話題になった映画『陰陽師』で怨霊となったのは早良(さわら)親王。このころの天皇は、早死にが多かった。政権抗争の中で、殺されたり、自ら死を選んだり、とても凄惨な時代だ。そして、その祟りを恐れ、神と崇め奉る。蝦夷討伐に熱心だった桓武天皇も祟りを恐れた一人で、自分の実子に天皇の座を譲りたいが為に実の弟である早良親王を死に追いやった。そういった人たちが祀られてるのが御霊神社である。そして万梨子は、上京区の白峰神社でまた自殺と遭遇してしまう。 しかし、雑誌の取材を取りやめにすることもできず三人は岡山へ向かい、吉備津神社、総社、女木島とまわり四国に渡る。四国では、牛鬼神社、白峰御霊と回る。そこでは、牛と鬼と宇宙人(UFO)の密接な関係を目の当たりにする。そして話はさらに展開し... とホラーな小説であるが、何とももの悲しいのは崇徳院である。こんな歌をご存じの方も多いだろう。 瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の 別れても末に 逢わむとぞ思ふ 中学や高校の頃に『百人一首』を一生懸命覚えた方は、「あれ、あれ!」と思い出すかもしれない。しかし、こんなロマンチストが怨霊と恐れられているのだ。それも平安時代などと言う昔でなく、ほんの明治の手前である。この時、孝明天皇と明治天皇は崇徳院に会津の見方にならないように頼んでいるという。とにかく読んでみなはれ! |