高橋克彦[2003/11/05・Vol.08 京伝怪異帖]





山の東京、伝?


 江戸・深川の質屋の家に生まれた一人の男が主人公である。始め浮世絵を書いていたが、後に文人となり、黄表紙で一世を風靡する。その「京伝」を主人公にしたのが、『京伝怪異帖』である。
 この話、もちろん高橋克彦の創作であるが、登場人物は実際にその当時を生きていた人たちである。第一話の『天狗髑髏(てんぐどくろ)』は、兄貴分である浮世絵師の「窪俊満(くぼとしみつ)」と「風来山人」の屋敷に忍び込み、天狗の髑髏といわれるものを盗みに行く話である。では、「風来山人」は誰かというと、言わずと知れた「平賀源内」である。この第一話で、京伝はもともと崇拝していた源内を師と仰ぎ、この3人を中心に話は展開していくのである。何故だかこの本を読みながら、源内は俳優の林隆三と重なっていた。
 さて、当の京伝であるが、住まいが江戸城紅葉山の東なので山東、京橋の近くなので京伝と号したと言う。。遊女を妻にするほど、若い頃から吉原に通い。
浮世絵は北尾政演の号で、江戸の風俗は洒落本で、どちらもなかなかの人気者だったらしい。しかし、松平定信の寛政の改革で、手鎖50日の処罰された。が、そんなことでへこたれる人間ではなく、その後も大活躍したと言う。
 余談だが、「割勘」も山東京伝が編み出したと言われているようだ。遊び人のくせに、勘定だけはしっかりしていたらしいく、「京伝勘定」とも呼ばれていたとのこと。なかなかのくせ者であるだ。さて年末、これから何回忘年会を「割勘」にしますか。