五木寛之[2003/04/11・Vol.15 レッスン]



レッスンはある春の日に始まった...

 あなたに、人生の先生はいるだろうか。
たとえば、仕事やら、勉強やら、技術やら、英会話やら、それを仕事としている人に対価を払って教えてもらうことはあるだろう。
そうではなく、人生のいろいろなことを対価なくして教えてくれる人は少ない。
 もちろん、教えてもらうに当たって、「この人なら!」と言う思いは教わる側に必要だ。
たとえばお酒の飲み方とか、人との接し方とか、人生を豊かにしてくれるいろいろなこと。そんな人と出会えると言うことは、とても幸せなことなのではあるまいか。

 この小説は26歳の主人公:ツトムが佐伯伽耶の生徒となり、人生のレッスンを受ける話だ。まぁ、その年代なら、年上のステキな女性に[Lesson]を受けることにあこがれるだろう。
クルマ・ゴルフ・ファッション・セックス・マナー、優雅な女性に教わるなんて、なんてステキなことだろう。ふと、身近にもにたようなカップルがいたような気がするが...

 さて、この小説の主人公と「凍河」の主人公:ツトムは、僕の頭の中で重なるところがある。それは名前だけではなく、人物のイメージだ。[Lesson]の映画は、ツトム:渡部篤郎、佐伯伽耶:秋吉久美子であるが、ツトムはイメージ通りだ。
もっとも映画を見たわけではないが。

 季節は春、何事にも始めるにはいい時期だ。新しい仕事、新しい出会い、新しい住まいなど、人それぞれにスタートがあるのだろう。 あなたは、レッスンを受けていますか?
新しいスタートはありますか?



Data:レッスン(平成4年6月光文社刊)
新潮文庫「い-15-29」、平成6年11月1日発行
平成4年→1992年