高円寺竜三をご存じだろうか。「艶歌・海峡物語・旅の終わりに」の3部作を読んだ方なら、すぐおわかりだろう。 この高円寺竜三には、実在のモデルがいる。もう亡くなられた方だが、馬渕玄三という。コロンビアからクラウンで艶歌を実際に作っていたディレクターだ。 例えば、島倉千代子のからたち日記、小林旭のギターを持った渡り鳥、身空ひばりの佐渡情話、水前寺清子の365歩のマーチ、など実際に手がけた歌はあげればきりがない。 《艶歌》は、新潮文庫「さらばモスクワ愚連隊」の中に収録されている。この文庫は、音楽を絡めた短編が5作で、解説は齋藤愼爾さんだ。最近出版された「漂泊者のノート」の共同執筆者である。そして、この本には珍しく「後記」がある。 1976年1月に書かれたものだ。五木さんは、この後記に書かれているスタイルを今はどう思っているだろうか。「エンターテイメントを書いてくれ〜!」と思っている私としては、是非とも聞いて見たいのだが。 《海峡物語》は、露木隆一が高円寺竜三とともに津軽海峡を渡り、再起をかける物語だ。この小説にでてくる喫茶店「パルク」の窓から港を眺めている女性のイメージが表紙の「海を眺める女(カシニョール)」なのだろう。 《旅の終わりに》は前進座で舞台になったが、小説とは全く別物と思った方がいいだろう。確かに、中村梅雀の高円寺竜三もありかもしれない。しかし、舞台は見たが小説は読んでいないと言う人は、是非読んでいただきたいと思う。いろいろなパターンがあっていいんだなと思っていただけるだろう。 さて、最後になったが、僕はこのシリーズにでてくる敵役の黒沢正信が大好きだ。なんと言ってもカッコイイのだ。もう亡くなられた俳優だが、黒沢正信を思うとき、西村晃を思い出す。 僕のイメージと、他の読者が思うイメージは違うかも知れない。 ただひとこと言うなら、黄門さまのイメージではないよ! |
Data:海峡物語 |
講談社文庫「い-01-26」、昭和57年3月15日発行 |
昭和57年→1982年 |