旅行記[2005/11/06・Vol.10 晩秋の金沢]




太郎でバクチコキを食す...

  晩秋の金沢、浅野川沿いの主計町。川沿いの『太郎』でバクチコキを食べた。この魚、一般にはカワハギ(別名:ウマヅラ)という。平べったい魚で、日本の沿岸でたいていどこでも取れる。皮が固く、一気に剥がないと身にたどり着かない。で、バクチコキが身ぐるみ剥がされるとこから名付けられたようだ。身は淡泊な白身で上品である。特筆すべきは「肝」である。だいたいに置いて、15〜20cm程の魚であるので、「肝」は小さい。鮮度が良くないと、なかなか生では食べられない。これを醤油に溶かして、刺身で食べても美味い魚である。この魚、横から見ると口が飛び出したようにつきだしていて、なかなか愛嬌のある顔をしている。似ていると言われると、嬉しくはないだろうが...
 この『太郎』、具の魚や貝が新鮮なのはもちろんであるが、薄味の出汁がうまい。そこに、また具材からもダシが出る。野菜はもちろん加賀野菜で、味が濃厚だ。自家製のきびもちなども入る。そして最後におじやとすれば、本日言うことなしの満腹である。決して飲み過ぎてはいけないよ!
 帰り道は浅野大橋を渡り、ひがし茶屋街をぶらっと歩いた。もちろん、茶屋にあがるお金も度胸もないので、通りで雰囲気を味わうだけなのだが、今にも染乃がふらりと出てきそうだ。いまでは、甘味処や食事処なども出来て、芸妓さんだけの色町ではない。天神橋まで歩こうかと思ったが、根性が足りず梅の橋を渡り、大通りへ戻ることにした。
 タクシーで戻ってきた香林坊は、東京と変わらない。でも、どこかが違う。言葉には表せないのだけど、何かが違う。けれど、都会の夜を歩きたくなくて、尾山神社の方へ行ってみる。脇の小道から、『風花のひと』の〈由佳〉のような女性が歩いてきた。思わず声を掛けてみたくなるが、そんな勇気はない。私も肝は小さいのである。さて、そんな夢を見させてくれる『新金沢小景』であるが、今度はどこへ夢旅行をしようかな...



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