週間美術館[2004/04/25・Vol.08 JAN Vermeer]



窓辺の光に誘われて...

  じっと見つめる瞳、ふっくらとした赤い唇。そして、何よりも鮮やかなブルーと黄色のターバン。この絵を『ターバンの娘』と言うのは、その印象だろう。しかし、原題は『真珠の耳飾りの少女』である。確かに絵の中心に位置する真珠の耳飾りがある、しかし、目を引くのは、青いターバンと赤い唇ではあるまいか。
 ヤン・フェルメール[JAN Vermeer]は、1632年にオランダのデルフトで生まれる。しかし、その生涯ははっきりせず、11人の子供をかかえ、貧窮のうちに43歳で亡くなったらしい。彼の絵画は全部で34点前後と数が少ない。デルフトの町の中央にあるマルクト広場、この周囲1キロ四方が彼の生涯の生活圏だったとも言う。フェルメールが43年の生涯の中で残した絵を眺めてみると、室内での人々の姿を描いたものが大半だ。その絵を見つめていると、或る種の好奇心をかきたてられてしまう。それは覗いているような気分になるからかもしれない。
 彼の絵が少ないのは、筆が遅かったからだ。遅いと言っても、慎重に慎重を重ね何度もデッサンをし、1枚描くのに1年近くかかることも希ではなかったという。また、まだ見つかっていない作品も多いとも言う。
 僕が初めてフェルメールを知ったのは、『戒厳令の夜』の上巻241頁。秋沢助教授が娘冴子に宛てた長い手紙に「私が研究したフェルメールは、現存する作品六十九点が数えらるが、実際には彼の真作はその中の四十二点であると言われている」と言う下りだった。そしてこの文庫本には、五木寛之の筆書きのサインと落款がある。新書の発表サイン会で、わがままを言いサインしていただいたが、いやな顔ひとつせず応じてくれた。僕の宝物でもある。
 さて話がずいぶんそれたが、今東京都美術館でフェルメールの作品を見ることができる。5月のさわやかな連休に、上野の森へ行ってみてはいかがですか。