週間美術館[2004/02/15・Vol.05 Mucha & Beardsley]



線が踊り、線が歌う...

  アルフォンス・ミッシャ(1860〜1939)は、現在のチェコ共和国に生まれた画家である。19世紀に入り、芸術は一部の特権階級だけのものではなくなりつつあった。パリやロンドンでは、街頭に張り出されたポスターに魅せられ芝居に足を運んだり、書店に並ぶ美しい本や挿し絵に目を奪われたりした。その背景には、複製・印刷技術の革新が大きく貢献している。ミュシャは、女優ベラ・ベルナールの演劇ポスターで一躍人気画家になった。彼の描く美しい女性たちは、一度は目にしたことがあるだろう。
 一方、オーブリー・ビアズリー(1872〜1898)は、イギリス生まれである。退廃的なエロスを線で追求したビアズリー。戯曲「サロメ」の挿し絵は、不気味さとエロスの中で好みが分かれるところだろう。
 ある意味正反対の作品を残した二人であるが、新しい時代のスターであり、また印刷技術の進歩のなかで、芸術をより一般に広めたと言うところでは、ともに今でも古さを全く感じさせない二人の作品には共通のものがあるのではあるまいか。