展覧会[2005/12/18・Vol04 北斎展]




ダイナミック、かつ繊細...

  すごい! まずは人の多さに、たまげた。東京国立博物館に行ったのは、12月1日の木曜日であった。着いたのは11時頃だろうか。しかし、既に20分待ちと言う。ほぼ前回と同じくらいの行列である。が、もうチケットは買ってあるし、12月4日までだし、今日を逃すわけには行かないのだ。なにせ、法事と言うことで有給をもらってきたのだし。ちなみに昨日は、Rさんと沖縄料理を食べ、古酒と豆腐ように舌鼓を打ち、程々に飲んでいたのだ。関係ないか...
 さて、時間を区切り少しずつ入場させるのであるが、中は無茶込みだ。浮世絵の前は行列で、そんなものに並ぶのが苦手な私は、人の肩越しに北斎を眺めてきた。もちろん、富岳三十六景は見逃せない。「赤富士」やら「沖の波裏」など、誰もが知っている作品も数多く展示されている。版画だけでなく、肉筆画もあり、内容は非常にあつい。その中で、私の目を引いたのは「幽霊画」であった。なんだかユーモラスなのだ。決して、そのように描いたのではないのだろうが、恨みや怖さを感じない。それが北斎の視点なのかな。そして、百歳近くまで生きた北斎は、晩年「画狂人」と名乗る。嘘かホントか知らないが、彼はそのまま土葬にされ、昭和の初めにお寺の区画整理で墓を移す際、棺桶に溜まった水の中に腐らぬまま漂っていたらしい。その眠った顔は、とても安らかだったのではあるまいか。
 そんなことを思いながら、浮世絵を見に行ったのか、人を見に行ったのか分からぬほどの混雑を抜け、平成館を後にした。いつものように、東京芸術大学から護国院大黒天の前を通り、言問通りへ出る。不忍通りとの交差点の手前で遅いお昼を食べる。小柱のかき揚げ丼だ。根津の町は昔ながらの店が多いが、この店は新しい。40歳くらいの夫婦でやっている。釜飯もあるようだ。栗釜飯なんかもいいよなぁ。栗と言えば、小布施。やっぱ、ゆっくりと北斎を堪能しに小布施の北斎館へ行かなくては。ダイナミックな「男浪」、繊細な「女浪」。そして、寝転がってみる岩松院の「八方睨みの鳳凰」。あらら、上野の北斎展よりも、小布施の北斎に心が飛んでしまった。まぁ、きっかけは何でもいいよ。素晴らしいものを素直に受け止められれば。北斎の目には、いつも素晴らしいものが映っていたのだろうね!