五木寛之[2002/06/11・Vol.08 朱夏の女たち]



東西南北、春夏秋冬、龍雀虎亀、青朱白玄...

 風水を良く知っている人なら、「ははぁ〜ん」と思い当たるだろう。
青春と言えば、誰もが甘酸っぱい時代を思い起こす。朱夏となると今ひとつピンとこないかも知れない。白秋は詩人を思いだし、玄冬は知らない人も多いだろう。
これは、春夏秋冬をそれぞれ色で現している。同時に、これは東西南北にも関わりがある。
 東は、春と青と龍。組み合わせで青春・青龍となり、東の門を護る神獣は龍である。また、物事の初めの意味もある。日が昇るのは東なので、昇竜となる。
 南は、夏と朱と雀。この場合の雀は孔雀を指す。朱雀門と言えば、誰もがわかるだろう。この門は、都の正門で南に位置する。また組み合わせとしては、朱夏・朱雀となる。
 西は、秋と白と虎。組み合わせで白秋・白虎となる。北原白秋や白虎隊は有名だ。龍にたいして、伏せている虎の絵が多いのは、日が沈む方角の神獣だからではあるまいか。
 北は、冬と玄と亀。武で亀を現すこともある。従って玄冬・玄武となる。

 さて、上の写真は、ウダイプールのレイク・パレス・ホテルである。
なぜ、インドのホテルが出てくるかというと、この『朱夏の女たち』は、あるインドツアーで知り合った女性3人の物語である。
この小説の中では出てこないが、前に紹介した『ヤヌスの首』の中には出てくるホテルなのだ。これらの小説を読んでいると、ぜひインドに行ってみたと思う。生と死に直面できる気がする。
はたして、それを受け入れることが出きるだろうか。

 インドに僕は、まだ招かれていない。インドとは、招かれた人だけが訪れることができるという。これから先、いつかインドから招かれる日が来るだろうか。



Data:朱夏の女たち[上・下](昭和62年5月文化出版局刊)
新潮文庫「い-15-24, 25」、平成2年3月25日発行
昭和62年→1987年